「日本の近代化の影に枕木あり」
(令和元年12月)
前回木製電柱について記述しましたが、今回は枕木について書きたいと思います。
ご存じのとおり、枕木は、線路において平行に敷設した2本のレールを支えている、鉄道には欠かせない部材です。
日本初の鉄道は、明治5年(1872年)、新橋・横浜間に開通しています。
広島県ではどうでしょう。
まず山陽本線ですが、神戸から工事が始まり、広島まで開通したのは明治27年(1894年)です。既に廃線となっていますが、同じ年に広島・宇品間が開通しています。
次に海田市・呉間の呉線が明治36年(1903年)に開通しています。
続いて横川・可部間の可部線が明治44年(1911年)に開通し、可部・三段峡間が昭和44年(1969年)に開通しました。
また、広島市内の路面電車は、大正元年に広島駅・己斐間、紙屋町・御幸橋間、八丁堀・白島間が開通しました。
このように、明治から大正にかけて、国内の鉄道網が整備され、近代化や工業化が急速に進んでいきました。
枕木に話を戻しますと、この時代は木製の枕木ですが、現在はコンクリート製が主流となっています。
木製の枕木に使われてきた樹種はどんなものがあったのでしょうか。日本では耐久性が高いとして、クリ、ヒノキ、ヒバ、ブナが使われてきました。またその他にニレやナラ、トチノキ、シデなども使われていたようです。
防腐処理がされていない場合、2〜3年、長くて10年程度しかもたない枕木も、クレオソート油による防腐処理が開発され、それまでに比べて2〜3倍は伸びたようです。しかしながら、コンクリート製ですと50年はもちますので、これには及びません。
近年、木製枕木にとって更なる逆風が吹いています。それは、レール間隔が広がり過ぎたことによる地方鉄道での相次ぐ脱線事故です。国土交通省はこれを受けて、平成30年(2018年)に、中小私鉄、第三セクター鉄道、貨物鉄道事業者に対して、木製枕木からコンクリート製枕木に取り換えるよう通知をしました。安全に勝るものはありませんので、いたしかたない措置です。
日本の近代化を陰で支えてきた木製枕木。
駅のホームに立たれた時、そこにあるのはコンクリート製枕木かもしれませんが、以前は木であったことをぜひ思い起こしてみてください。
ただし、覗き込みすぎて転落事故のないようにご注意を。 |
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